幼稚園で子どもたちの様子を観察していると、時々こんな光景を見ることがあります。誰かが泣いていたりするとき、それを見た子どもたちがじわじわとまわりに集まってきて、黙ってただじっと見つめているのです。
大人はそういきません。「どうしたの?」と声をかけたり、ケガがないか確認したり、何かしないといけないという気持ちに駆られます。大人の心情として当然ですし、保育者であればなおさらしかるべき対応をしなければなりません。
それを否定するつもりはないのですが、子どもたちがすごいのは、そのじっと見つめている瞬間、「わたし」がないことです。「わたし」が何をすべきか、何をしてあげようかと考えるのではなく、ただ無心になってそばにいるだけです。泣いている子どもと一体になっているといったほうがいいかもしれません。
近代ホスピスの母と呼ばれ緩和ケアの礎を築いたシシリー・ソンダースが「Not doing, but being.」(何かをするのではなく、ただそばにいる)ということが一番のケアであると述べています。
泣いている子どもの周りに集まってただ見つめている子どもたちも、「そばにいるよ」という意思表示をもって最も大切なケアをしているのではないでしょうか。