園長ブログ

ただいるだけでいい

ナチスの全体主義の起源を研究したことで知られるハンナ・アーレントというユダヤ人哲学者がいます。彼女が20代の時に執筆した『アウグスティヌスの愛の概念』と題する学位論文の中に「amo: Volo ut sis.」(アモー・ウォロ・ウト・シス) という言葉が記されています(アウグスティヌス:ローマ帝国時代、キリスト教の教義を大成した哲学者)。

直訳すると「愛とは、あるがままのあなたの存在を願うこと」となるでしょう。

私たちはつい愛する相手に対して、何かしてあげたい、あるいは何かをしてもらいたいという気持ちに駆られます。でもそういう思いは欠乏感がつのるばかりで、いつまでたっても決して満たされることはありません。

本当の愛とは、どれだけ与えたか、どれだけ得られたかということでは計ることができません。そういう打算や取引を介するのではなく、相手のあるがままの存在をそのまま認め、何があってもただいるだけでいいと願うことがアウグスティヌスのいう愛です。

目の前の子どもや家族にもそんな眼差しが必要かもしれません。